ヨガを知ろう❹

ヨガを知ろう❹

❹ 八支則(はっしそく)を知ろう

・ヨガスートラの第2章と第3章に書かれている

・ヨガのゴールである心が静まり、苦悩に揺れ動くことがない状態への8つの考え方とその練習

1・2・3は外へ向かう練習

4・5は内に向かう練習

5・7・8は心の奥に向かう練習

(ヨガのゴールについては=『❶ヨガってなに?』)


(1) 禁戒(きんかい)ヤマ

ヨガスートラ 2章30節

すべきではないこと」についてかかれています。ヤマには以下の5つがあり、環境や他者との良い関係を築くための考え方です。ヨガのゴールである心が静まり、苦悩に揺れ動くことがない状態に辿り着くには5つのヤマを実践し心が揺れ動いてしまう要因を取り除きましょう。

①非暴力/アヒンサー

非暴力、非殺生。肉体的な暴力だけでなく精神的な暴力、言葉の暴力をふるってはいけません。他者に対してはもちろんですが自分自身や環境に対してもです。心の中にも怒りや憎しみや暴力的なものを持つべきではありません。

②誠実/サティア 

噓をつかない。正直で誠実に生きる。自分自身に対してもそうであれば見栄を張ることや無理をすることもありません。

③不盗/アステーヤ

人の物を盗まない。物、時間、尊厳、権利、平和を奪わない。欲張ったり独り占めせず相手を思いやる。

④梵行(ぼんぎょう)/ブラフマチャリヤ 

性欲、物欲、食欲、名誉欲などの利己的な欲望と快楽に夢中になってエネルギーを浪費してはいけない。エネルギーを必要なところに集中するために利己的な欲を満たすことをやめる。「禁欲」「貞操」と訳されることも多い。

⑤不貪(ふとん)/アパリグラハ

物や人に執着しない。必要以上に所有したり適切な範囲を超えて物を貪らない。持ちすぎると失うことを恐れ、嫉妬や怒りに変わることもある。

(2)勧戒(かんかい)ニヤマ

ヨガスートラ 2章32節

したほうが良いこと」についてかかれています。ニヤマには以下の5つがあり、自分と向き合うことや自己研鑽に関するための考え方です。ヨガのゴールである心が静まり、苦悩に揺れ動くことがない状態に辿り着くまでには、もういいやと投げやりな気持ちになったり逃げたくなることもあるけれど、その壁を乗り越えるには探求心と自己研鑽が欠かせません。

①清浄(しょうじょう)/シャウチャ

自分自身と周囲の環境を清潔に保つこと。心にも不浄な思いをもたない。使うことばや振る舞いもきれいなものを心がける。

②知足(ちそく)/サントーシャ

今あるもの、与えられたものに感謝し満足する。物事を肯定的に受け止めていく。

③苦行(しょうじょう)/タパス

苦しい状況をも受け入れ自己研鑽の機会として向き合う。

④読(どくじゅ)/スヴァーディーヤ

大切な心得や実現したい目標を声に出し、内なる自己に深く刻む。「聖典の研究」ヨガの聖典やマントラを自己学習することと解釈されることも多い。

⑤祈念/イーシュヴァラ・プラニダーナ

自分の存在が周囲と深くつながりあっていることに感謝する。万物の背後にある力、自然の摂理など、説明できない大きな力への敬意を表す。

(3)坐法(体位法) / アーサナ

ヨガスートラ 2章46節

やっときた!これぞヨガっ!!と思いますよね。ヨガの特徴であるポーズのこと。もとは瞑想を行うための坐法でしたが、時代が進むにつれ体位法へ発展しました。ヨガスートラに『アーサナ(坐法)は快適で安定したものでなければならない』と書かれています。心が静まり、苦悩に揺れ動くことがない状態に近づくためにも快適に安定して座りましょうということです。もしも自分の身体に硬さや癖があったり、姿勢が悪ければ、痛いところが出てきたり、つらい状況となり、快適に安定して座れません。快適に安定して座れる身体づくりのために、体位法であるヨガポーズを練習します。

(4)調気(ちょうき)(呼吸法)/プラーナーヤーマ

ヨガスートラ 2章49節

呼吸と、体と心をつなげることに意識をむけること。リラックスしている時は深くゆったりとした呼吸、不安や緊張のある時には浅くはやい呼吸になるように、呼吸や心身の状態をあらわします。調気はいかなる乱れもなく静かな状態でコントロールする練習です。呼吸と心身はつながっているので、呼吸の落ち着きと安定は心身の安定もキープできます。

(5)制感/プラティヤーハーラ

ヨガスートラ 2章54節

心を制御するために、外側に向く五感の感覚を自身の内側にもっていくこと。外の情報に心が振り回されることなく自分自身の内側に意識を集中させることで、目の前の誘惑や困難などが起きてもぶれない精神の形成につながります。

(6)凝念(ぎょうねん)ダーラナ

ヨガスートラ 第2章52節 第3章1節

一点集中。八支則の6つめからは心の奥に向かう練習です。1~5までで自身の内外との関わりや、五感と呼吸を通じての心身のコントロールを練習してきました。(6)凝念では、心が静まり、苦悩に揺れ動くことがない状態に辿り着くための一点に向けた高い集中力を練習します。集中の対象は何でもよいとされますが、呼吸・眉間・鼻先などの身体や、聖音オームなどです。(アイルではオームに関しては練習していません。)凝念は本当に難しいです。呼吸や鼻先にいくら集中してみても、五感が制御できず、頭の中に思考が渦巻いたり、外で起こっていることに興味がわいてしまいます。八支則は(1)禁戒から順番にクリアするものではないですが、(5)制感へ逆戻りするような感覚に陥ってしまいます。少しずつ集中する時間をのばすように練習します。(7)静慮につづく瞑想の始まりです。

(7)静慮(じょうりょ)(瞑想法)/ディヤーナ

ヨガスートラ 第3章2節

雑念から解放された瞑想のこと。(5)制感の心の制御が自然とでき、同時に(6)凝念の一点集中し、それらを積極的に努力することなくそれらの延長線上に自然と訪れる深い静かな精神。

(8)三昧(ざんまい)サマーディ

ヨガスートラ 第3章3節

瞑想が深まり集中の対象と自己の区別がなくなり、集中しているという意識すらなくなった状態。心の平静を保つ精神的な喜びを感じ、至福とされている。


さいごに

一般的にヨガというとポーズをとることを思い浮かべます。それと、その際に呼吸を丁寧に行うことをヨガだと思いがちです。もちろんその二点もヨガとして正しいです。でも八支則を知ってみるとそれだけではないことがわかります。ヨガマットの上でなくても、日常生活のどの場面、どんな時間でもヨガは実践できるということに気づきますね。また、ヨガでなくとも、人間ができているなぁと思う時や、こう在りたいと思うこと、親が子に教えること、自分や人生について考える時などに八支則の諸々とリンクしていますよね。

ヨガはポーズと呼吸だけではないことをお伝えしました😊


参考図書

「やさしく学ぶ YOGA 哲学 ヨーガスートラ」 向井田みお (YOGA BOOKS)

「YOGA大百科」 監修 佳子山田多佳子 株式会社医学映像教育センター